Silent Hill

　廃墟、遺跡好きの間では言わずと知れた無人島。猿島。と言いつつも私はつい最近この存在を知った。

　横須賀の海に浮かぶこの無人要塞島は、戦時中敵を迎撃する砲台が置かれていた。観音崎砲台よりも規模が大きかった。砲台跡の他にも、弾薬庫や電波塔なども残っていた。フェリーに揺られて十分ほどで着くこの島は、奥へ行けばいくほど味わいと厳かな雰囲気が強まる。猿島入口は観光地化しているのだ。BBQ会場に砂浜、おしゃれなカフェ、猿島でコスプレ撮影をするのであろうウマ娘姿のお姉さまたち。猿島でウマ娘ってどういう状況だ。まだ雰囲気てきにエヴァとか幼女戦記とかのコスプレなら分からんでもないとはなりそうだが。そんな私は制服のような格好でこの場に挑んだ。
　だがそんなキャッキャウフフした雰囲気もひとたび切通しの坂を登って弾薬庫跡まで行ってしまえば変わる。石とレンガ造りの壁に埋め込まれた弾薬庫は今でも大きな口を開けて弾薬が運び込まれるのを待ち構えているようだった。至る所にあるトンネルたちは、建てられてからゆうに百年経とうとしている今でも頑強にそこにそびえ立ていた。石はほぼ劣化しないため何百年、何千年とそこに居続けることができる。きっとこの猿島たちも千年後もここでこの荘厳な雰囲気を保っていることだろう。
　砲台跡は、はっきりいって跡だけなのでぽっかりとコンクリートの塊やレールが敷かれているだけで、そこまで何かグッと来るものがあるわけではない。（私が跡よりも形として残っているほうが好きなのだ）
　
　それよりも個人的に好きなのが、壁に掘られた落書きたちだ。書かれ過ぎて壁画のようになった落書きの上には苔が生え、なんだかおぞましい状態になっている。